J-SCOPE
藤枝判定・VAR2026-10-29

J2にVARがないのは費用と人材 槙野監督の審判批判とサポーターの賛否・論点

結論:J2・J3のリーグ戦にVARがないのは、導入に億円単位の費用がかかり、映像を担当する審判などの人材も足りないためだ。

10月24日、藤枝MYFCの槙野智章監督が判定をめぐって「マジでレベル低い」と審判を批判。SNSでは発言の是非に加え、J2の判定の仕組みをどう変えるかという議論が広がった。

何があったのか

10月24日の明治安田J2リーグ第13節、藤枝MYFC対徳島ヴォルティス。0-1で藤枝がリードされていた後半68分、藤枝FW川本梨誉がペナルティエリア内で浮かせたボールが、徳島DF田中隼人の左腕付近に当たった。主審はハンドを取らず、プレーは続行。槙野監督は副審に詰め寄って抗議し、イエローカードを受けた。試合はそのまま0-1で藤枝が敗れた。

試合後のDAZNのインタビューで、槙野監督は次のように話した。

DAZNはこのインタビューを公式Xで「皆さんはどう思いましたか?」と投稿し、議論が一気に広がった。なお、腕の位置や動きによって判断が分かれる場面で、誤審と断定するのは難しいとする報道もある。

田中パウロ淳一の賛同と「言葉足らず」

栃木シティの田中パウロ淳一は当日、「槙野さんが発言していることに意味がある」と賛同を投稿し、50万回以上表示された。その後、審判4級の資格を持つ識者から「槙野監督の発言は特定の審判個人に向いている」と指摘を受け、26日に「言葉足らずだったかもしれません」と追記。伝えたかったのは「審判への負担が大きすぎるということ」だと説明した。

田中は9月にも、判定の一場面だけを切り取って審判が批判される状況に触れ、「審判を守るためにも」J2・J3にVARや簡易的な確認手段が必要ではないかと提言していた。

SNSの反応 賛同と批判、そして制度論

反応の多くは、審判を責めるか守るかの二択ではなく、「人の目だけで判定する限界」をどう補うかに向かっている。なお、これらはSNS上の意見であり、サポーター全体の意向を示すものではない。

J2にVARがないのはなぜか

J1リーグ戦でVARを導入。得点、PK、退場などに関わる明白な誤りが確認の対象。PKにつながるハンドの疑いも対象になり得る
J1昇格
プレーオフ
2023年以降は決勝のみで導入。2025年は準決勝にも広げた
J2・J3
リーグ戦
導入されていない

フットボールチャンネルのコラムによると、Jリーグの野々村芳和チェアマンは2023年2月、J2への導入には億円単位の費用がかかると説明。専門の人材が足りないことも課題に挙がっている。VARには機材だけでなく、訓練を受けた審判員や映像のオペレーター、通信環境が必要で、毎年の費用と育成が欠かせない。

一方、Jリーグは2026年1月にプロのレフェリーを27人に増やし、4月には29人になった。若手を育てる制度も始めている。審判の「レベルを上げる」取り組み自体は進んでいるが、その効果がすぐにJ2の毎試合に表れるわけではない。

海外の2部リーグはどうしているか

FIFAもカメラ4〜8台で運用する低コスト版の「VAR Light」を用意しており、Jリーグは2023年の会見で、JFAと協力して導入の可能性を検討する必要があるという認識を示している。

論点:「後で言われても遅い」をどう解決するか

槙野監督の発言で一番重いのは、「後で意見書を出しても遅い」という部分だろう。試合後に判定の誤りが認められても、勝ち点は戻らない。昇格や残留がかかるJ2では、その1つの判定がクラブの1年を左右することもある。

ただ、その問題は審判個人を批判しても解決しない。審判が試合の中で見直す手段を持っていないことが、根本にある。VARは人の目の限界を前提にした仕組みで、それがないJ2では、一つの見落としがそのまま結果になる。審判への批判が強まれば、なり手が減り、レベルの底上げはさらに遠のく。

だからこそ、議論は「誰が悪いか」より「どの仕組みなら払える費用で導入できるか」に進めたい。フルスペックのVARが難しいなら、FVSやVAR Lightのような簡易版を、昇格・残留に関わる終盤の試合から試す方法もある。費用を誰がどう負担するのかも含めて、Jリーグがどこまで具体的な検討を示せるかが注目される。

なお、槙野監督は浦和の選手だった2019年、ルヴァンカップでの審判員への言動で1試合の出場停止処分を受けている。今回の発言にJリーグがどう対応するかも、合わせて見ておきたい。